幕末オオカミ 第二部 京都血風編
「そんなことより、こっちはどう?変わったことはない?」
平助くんが聞く。
「うん、そうだな……」
あたしは平助くんに、街の様子を簡単に説明した。
京の街はまだまだ復興中であること。
長州軍が撤退したと同時に、悪さをするもののけや、それに取りつかれた浪士も少なくなっていること。
「一時的に、だろうけどね」
「いつ帰ってくるかわからねえな。敵は長州一藩ってわけでもねえし」
あたしと総司の話を、平助くんは神妙な面持ちで聞いていた。
「そっか……。ところで……あのさ。
山南さんはどんな感じ?」
うなずいたあとで、平助くんは声を殺して聞く。
「腕は……良くなってねえみたいだな」
難しい顔で、総司がぽつりと言う。
「伊東さんが来て、どう?」
「うん、なんか難しい物語のことを楽しそうに話しているのを見たけど」
たしか、『三国志』だっけ?
副長に言われた任務のことは言えないけれど、あたしは伊東先生に見つからないようにその様子を探っていて、偶然そんな光景を見た。