幕末オオカミ 第二部 京都血風編
「美しい三人が集まって、なんの話をしていたんだい?」
伊東参謀はうっとりと、また自分の世界に入ってしまっているみたい。
「大したことではありません。では」
沖田はさっと立ち上がると、あたしの手を引き、伊東参謀の横をすり抜けて歩き出す。
「あっ、待ってくれたまえ!
今から離れに遊びに来ないかい……」
そんな参謀の声が聞こえないフリをして、総司は廊下を大股で歩き続ける。
「藤堂君は来てくれますよね?」
「え、あ、はい……」
そんな小さなやり取りがやっと聞こえるところで、総司は速度を落とした。
「平助くん、気にいられてるんだね……」
「あいつには悪いが、人身御供になってもらおう」
「うん……夕飯のおかず、平助くんにあげよう」
「それがいいな」
ああ、不審な動きはないけど、なんとなく苦手だなあ、伊東参謀……。
そのまま何事もないまま、京の街には寒さ厳しい冬がやってこようとしていた。