幕末オオカミ 第二部 京都血風編


「先生、あたしは先生に聞きたいんです。

とってもわかりやすいし……それに、あたしは伊東参謀より、山南先生の方が好きですから!」


障子を閉め、布団の横にひざまずいて言うと、山南先生はハッとした顔でむくりと起き上がった。


枕元に置いてあったメガネをかけると、ため息をついて額を押さえる。


「私は、何を……」


まるで子供のようにいじけていた自分に今気づいたのか、赤くなる代わりにじっとりと額に汗をかく山南先生。


「先生、愚痴ならいくらでも聞きます。

あたしは頭が悪いから、助けにはなれないかもしれないけれど……」


そっと、山南先生のまだ感覚の残る左手をにぎってみる。


無礼かもしれないけれど、とにかく落ち着いてもらわなきゃ……。


「……そんなことないよ。

楓くんがいてくれると、すごく救われる……」


山南先生は優しい声音で苦笑すると、そっとあたしの手から逃げていく。


「でも、武士が女子に泣き言を言うわけにはいかないよ」


さっと立ち上がった山南先生は、布団をたたみ始める。


< 96 / 404 >

この作品をシェア

pagetop