幕末オオカミ 第二部 京都血風編
「先生、あたしは先生に聞きたいんです。
とってもわかりやすいし……それに、あたしは伊東参謀より、山南先生の方が好きですから!」
障子を閉め、布団の横にひざまずいて言うと、山南先生はハッとした顔でむくりと起き上がった。
枕元に置いてあったメガネをかけると、ため息をついて額を押さえる。
「私は、何を……」
まるで子供のようにいじけていた自分に今気づいたのか、赤くなる代わりにじっとりと額に汗をかく山南先生。
「先生、愚痴ならいくらでも聞きます。
あたしは頭が悪いから、助けにはなれないかもしれないけれど……」
そっと、山南先生のまだ感覚の残る左手をにぎってみる。
無礼かもしれないけれど、とにかく落ち着いてもらわなきゃ……。
「……そんなことないよ。
楓くんがいてくれると、すごく救われる……」
山南先生は優しい声音で苦笑すると、そっとあたしの手から逃げていく。
「でも、武士が女子に泣き言を言うわけにはいかないよ」
さっと立ち上がった山南先生は、布団をたたみ始める。