幕末オオカミ 第二部 京都血風編
「手伝います」
あたしが手を出すと、山南先生は泣きそうな顔でこちらを見つめた。
「片手でもこれくらいは大丈夫だよ。
だから……少し一人にしてくれないかな」
そう言われても、あたしは布団から手を離さなかった。
「いいえ。武士の矜持なんか捨てて、いくらでも泣き言言ってください。
あたしは、山南先生をひとりにはしません!」
そう言って山南先生から布団を奪うと、さっさとたたみ、押入れの中に押し込めた。
「……楓くん……ありがとう」
背後でぽつりとつぶやく声が聞こえた。
振り返ると、山南先生は袴もつけずに襦袢のままで、文机に肘をついて頭を抱えていた。
「……お茶を淹れてきます。お菓子もあるんですけど、食べますよねっ?」
わざと明るく言うと、あたしはそっと部屋の中から出た。