きみにこい
笑って言った後にほんの少しだけ真剣な表情をして、朝比奈が言った。
「……そこまで人を想えるお前が羨ましいよ」
なんとも言えない複雑な表情をしてそう言うもんだから、「朝比奈の事もちょっと好きだよ」って言ったら「全然嬉しくねぇんだけど」って真顔で言われた。
「あたしなんかに好かれたら男の人きっと大変だと思う」
「だろうな」
「………」
「まぁとりあえず、頑張れよ」
あたしの頭を軽く小突いて朝比奈が立ち上がった。
「あたし朝比奈の恋にも協力するから言ってよね!」
「お前には頼まねぇから大丈夫」
ニコッと笑ってあたしに背を向けて教室へ帰っていった朝比奈の背中。身長高くてがっしりしてて。顔もそんなに悪くないしあいつは絶対誰かに好かれてるはずなのに。
「……そこまで人を想えるお前が羨ましいよ」
そう言う朝比奈が良く分からなかった。