聖乙女(リル・ファーレ)の叙情詩~約束の詩~
坑道の入口は狭く、荷車を持った人一人がやっと通れるくらいだった。

入口というより、穿たれたただの穴のように見える。

もともとは細々とした鉄鉱山であったというから無理もない。この国で鉄はあまり重要視されていないのだ。

監視する者一人いなかったので、一行は簡単に坑道に入り込むことができた。

湿っぽい土の道は申し訳程度のランプの灯りのみで暗く、闇があちこちからじわじわと溢れ出すかのようだった。

「まずは一番近い金鉱から調べてみよう」

フューリィを先頭に、彼らはまっすぐに道を下り、闇の中で自分が前に進んでいるのか後ろに進んでいるのかだんだんわからなくなってくる頃やっと、道を右に折れた。するとにわかに物音と人の気配がし始めた。

「もっと右! そこ全部崩して!」

「もっと上まで登れ!」

響く怒鳴り声と共に目の前が開けたかと思うと、そこは広間のようになっており、十数人の鉱夫たちがせっせと働いていた。

はしごに上り、ハンマーをふるう者、落ちてきた石を拾う者、粉々に砕いて金だけを取り出す者…皆とりつかれたような表情で仕事に熱中し、リュティア達の姿になど目もくれない。

「パール」

「うん…ここからは邪悪な“魔の力の気配”はしないね」

星麗であるというリュティアと、それに匹敵する力を持ったパール。

魔月の気配は常人でも感じられるが、その“力の気配”はこの二人にしか感じ取れない。
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