聖乙女(リル・ファーレ)の叙情詩~約束の詩~
リュティアとパールの二人が解せぬというように囁き交わしていると、鉱夫の一人が広間からこちらへ飛び出すように駆けてきた。その背中を「エリク! 水だ水! さっさとしろよ!」と男のだみ声が押す。

エリクと呼ばれた鉱夫はまだ若くいかにも優しい顔つきだったので、フューリィは勇気を出して声をかけてみることにした。

「あの、奇病の原因を探るためにここを調べているんですが、何か知りませんか」

質問しながら、フューリィはエリクの表情が歪んで「帰った帰った」と手を振る様を思い浮かべていた。今まで誰に聞いてもそうだったからだ。

しかしエリクは驚いたように口を開いたあと、すぐに真剣な顔つきになった。

「…僕の知る限りのことを教えます。ついてきてください」

その声色から、彼が真剣に奇病についてを案じていることがうかがえた。一行は頷き合うと、エリクの後について歩き始めた。

「二週間と少し前、この金鉱が発見されたのですが、その時同時に出土されたものがあるのです」

「それは?」

「武器です。金でできた、三又の槍でした。もしかしたら、あれが、出土してはいけなかった物なのかも知れません…」

その可能性が高いと、一同の瞳が輝く。

「その武器を直接見ることはできますか」

「金鉱発見の象徴としてガラスケースの中に入れて飾ってありますから、今からそこにご案内します」

再び暗い坑道を行くことしばし、一行が案内されたのはもうひとつの金採掘現場の広間だった。そこでも男たちが汗水流して働いている最中だったが、先ほどと違って広間中央に立派なガラスケースが備えてあった。

「あれです」
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