聖乙女(リル・ファーレ)の叙情詩~約束の詩~
リュティアの心から自然と疑問がわき、言葉となってこぼれおちた。
「でも確か、神々も星麗も魔月も、“悲しみ”という感情は持たないのでは?」
光神と星麗は喜びや愛や慈しみの心―正の感情を司り、闇神や魔月は欲望や怒り―負の感情を司る。そのどちらでもない悲しみは、人間にしかない感情だといわれていた。それなのに光神が涙を流したというのだろうか。
セラフィムが複雑な表情を浮かべた。
「はい、その通りです…ですから私にもわかりません。なぜ光神は悲しみを持ち、涙を流したのか…戦いの最後に、いったい何があったのか…」
神殿の中に沈黙が落ちた。それぞれにじっと考え込んだ沈黙だった。
しかし考えても埒の明かぬことと思ったのだろう、その沈黙を破ったのはセラフィム自身だった。
「邪闇石について私の知ることはそれだけです。それよりお教えしたいことがあります。聖乙女よ、星の石板を見せていただけませんか? それは星麗文字で書かれているため、私ならばすべて読むことができます。読めば、聖具によってどのような力が手に入るかをお教えできます」
「本当ですか!?」
セラフィムには何もかもが見通せるのだろうか。
星の石版のことも知っているなんて。
そんな畏敬の念を抱きながら、リュティアは星の石版を取り出し彼に見せた。
時を凝縮したような重厚な石板に、セラフィムの細い指先が走る。その様子を一行は固唾をのんで見守った。やがてセラフィムが静かに語り始めた。
「でも確か、神々も星麗も魔月も、“悲しみ”という感情は持たないのでは?」
光神と星麗は喜びや愛や慈しみの心―正の感情を司り、闇神や魔月は欲望や怒り―負の感情を司る。そのどちらでもない悲しみは、人間にしかない感情だといわれていた。それなのに光神が涙を流したというのだろうか。
セラフィムが複雑な表情を浮かべた。
「はい、その通りです…ですから私にもわかりません。なぜ光神は悲しみを持ち、涙を流したのか…戦いの最後に、いったい何があったのか…」
神殿の中に沈黙が落ちた。それぞれにじっと考え込んだ沈黙だった。
しかし考えても埒の明かぬことと思ったのだろう、その沈黙を破ったのはセラフィム自身だった。
「邪闇石について私の知ることはそれだけです。それよりお教えしたいことがあります。聖乙女よ、星の石板を見せていただけませんか? それは星麗文字で書かれているため、私ならばすべて読むことができます。読めば、聖具によってどのような力が手に入るかをお教えできます」
「本当ですか!?」
セラフィムには何もかもが見通せるのだろうか。
星の石版のことも知っているなんて。
そんな畏敬の念を抱きながら、リュティアは星の石版を取り出し彼に見せた。
時を凝縮したような重厚な石板に、セラフィムの細い指先が走る。その様子を一行は固唾をのんで見守った。やがてセラフィムが静かに語り始めた。