聖乙女(リル・ファーレ)の叙情詩~約束の詩~

広大な広葉樹林プリナートの森の中を蛇行しながら流れるプリナート川。

この川が国境のラツェルト川に流れ込む8キロメートルの間に、16もの湖水が点在している。それらの湖は92もの滝によって階段状に結ばれ、世にも美しい光景を生み出している。

リュティア達は滝の音を聞きながら、セラフィムと並んで湖沿いにゆっくりと歩いていた。

聖具がすでに破壊されていると知った時の衝撃がまだリュティアの体の中に残っている。

聖具はこれからの戦いに必要な力を手にするためのものであり、故国を再興して世界を聖なる守りの力で包むためにも、絶対に必要なものだからだ。だが、セラフィムはすぐにこう言って希望をくれた。

―聖具は確かにこの通り破壊されてしまいましたが、まだ未完成でした。未完成なうちは、直すことができます、と。

その瞬間一行の胸に希望が芽生えたが、パールだけがなぜかはっと口元を押さえていた。

聖具を直すためには、階段状に連なる16の湖の中心、深碧の湖へ今すぐにセラフィムを連れていかなければならないという。

というのも、セラフィムは聖具を修復し、完成させるための力を神殿から動かないことで3000年間蓄えてきたが、最近蓄えてきたはずの力の一端を使ってしまったというのだ。

それ以来力は流出を続けており、一刻も早く聖具の修復を始めなければ、完成させることができなくなるかもしれないという。

聖乙女だけがセラフィムを、神殿との力のつながりを保ったままそこまで連れ出すことができる。だから今まで聖乙女の訪れを待っていたという。

リュティアたちはそれを聞き、取るものも取り敢えず深碧の湖めざして出発した。
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