聖乙女(リル・ファーレ)の叙情詩~約束の詩~
2
雨上がりのガラスの村を、桜色の髪の乙女が行く。
背筋を伸ばし、白い手を左右に振って、小走りで村を駆け抜ける。
その金糸銀糸を織り込んだようにきらめく髪も、華奢な体もしっとりと濡れ、妖しいほどに美しい。
道行く人々はまるで幻を見るように、呆然と口を開けて彼女を見送る。
彼女の動きに合わせてはじける水滴は、さきほどまで降っていた雨ではない。深碧の湖のそれだった。
リュティアは、たった今セラフィムに会ってきたばかりだった。
『…それは、本当なのですか?』
『残念ながら…本当です』
深碧の湖の中の、巨木の神殿。完成を間近に控えた聖具虹の錫杖に手をかざしながら、セラフィムは表情を曇らせた。
『アクス―彼を見た瞬間から、重い病に侵されていることはわかっていました』
『最初から、アクスさんは病だったと、そういうことなのですね…』
リュティアは衝撃のあまりしばし言葉を失ったが、アクスの病状は一秒でも惜しいことに気が付きすぐに縋るような視線をセラフィムに向けた。
『セラフィム様。あなたのお力で、アクスさんの病を治していただけませんか』
『聖乙女よ…申し訳ありません。それは私の力をもってしても、できないのです』
『そんな……!』
セラフィムだけが希望だったリュティアは色を失った。
『ただし、命を永らえさせる方法がひとつだけあります…このことは、できるならばお教えしたくなかったのですが…』
『教えて下さい! お願いします!』
背筋を伸ばし、白い手を左右に振って、小走りで村を駆け抜ける。
その金糸銀糸を織り込んだようにきらめく髪も、華奢な体もしっとりと濡れ、妖しいほどに美しい。
道行く人々はまるで幻を見るように、呆然と口を開けて彼女を見送る。
彼女の動きに合わせてはじける水滴は、さきほどまで降っていた雨ではない。深碧の湖のそれだった。
リュティアは、たった今セラフィムに会ってきたばかりだった。
『…それは、本当なのですか?』
『残念ながら…本当です』
深碧の湖の中の、巨木の神殿。完成を間近に控えた聖具虹の錫杖に手をかざしながら、セラフィムは表情を曇らせた。
『アクス―彼を見た瞬間から、重い病に侵されていることはわかっていました』
『最初から、アクスさんは病だったと、そういうことなのですね…』
リュティアは衝撃のあまりしばし言葉を失ったが、アクスの病状は一秒でも惜しいことに気が付きすぐに縋るような視線をセラフィムに向けた。
『セラフィム様。あなたのお力で、アクスさんの病を治していただけませんか』
『聖乙女よ…申し訳ありません。それは私の力をもってしても、できないのです』
『そんな……!』
セラフィムだけが希望だったリュティアは色を失った。
『ただし、命を永らえさせる方法がひとつだけあります…このことは、できるならばお教えしたくなかったのですが…』
『教えて下さい! お願いします!』