忠犬ハツ恋
「大ちゃん!!」

大ちゃんは振り返って優しい眼差しを向けてくれる。

「キス…して…?」

不安で仕方なかった。
大ちゃんはこれからまた東野で事務員さんに会う。
大ちゃんの胸に抱かれる見ず知らずの女性の影が脳裏から消えなかった。

こちらは真剣に頼んでいるのに大ちゃんは私の方に戻って来て何故か笑う。

「お前なぁ〜、俺に風邪をうつして治そうったってそうは行かないぞ。
早く風邪治せ!
キスはその時の褒美にやる。」

それもそうだった…。

我ながらバカな時にバカなお願いをしてしまったと落ち込んだ。

大ちゃんはそんな私のおでこにそっとキスをすると「じゃあ行って来る」と言って去って行った。
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