忠犬ハツ恋

「大輔は阿呆だ。
堂々と上手く立ち回ればいいのに。
ねぇ美咲ちゃん、そんなに大輔の何処がいいの？」

「何処って……。
昔からずっと一緒に居るから…
何だかそれが自然と言うか…。
空気みたいな存在と言うか…。」

「空気かぁ……。
それ大輔も言ってたなぁ〜。
でもそれってどうなの？
確かに空気って無きゃ生きて行けないけど、
普段当たり前に身の回りにあるからその存在ってついおろそかにするよね？」

そう言いながら一色先生はタバコの煙を細長く吐き出した。

「……一色先生は意地悪ですね。」

「俺、好きな子は虐めたくなるタチなの。」

「帰ります。お邪魔しました。」

私はガトーショコラを持ったまま一色先生に小さくお辞儀をする。
一色先生は笑顔で私に手を振った。