忠犬ハツ恋
なのに何故か大ちゃんが私の隣から遠ざかって行く気配がする。

まさか助走が必要なわけじゃあるまいし……。

「お待たせ。いいよ、目、開けて。」

そっと目を開けると目の前に見覚えのあるK&Kの紙袋があった。

「こ…これ……。」

わたしの脳裏に薄れかけていた佐々木詩織さんと言う人物が蘇る。
私の表情が曇るのを見て大ちゃんは探るように聞いた。

「やっぱり。この間これ見つけたんだろ?
こんな事なら下手に隠すんじゃ無かったな…。」

大ちゃんは申し訳なさそうに頭を掻いた。

これは…私の見知らぬ女性から大ちゃんへの誕生日プレゼントなんじゃ……。

「どういう事?」

大ちゃんは私の膝の上にそれを置き開けるように手振りで促す。

恐る恐る中を見ると、やはりこの間見た通りのワインレッドの服。
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