忠犬ハツ恋
試着して終わりかと思えばメイクとヘアーセットまで施して貰った。
頭にヘッドドレスを飾るともう今にも挙式出来そうな完成度だ。

さっきまですっぴんで幼かった私が見事に化けて鏡の前にいた。

メイクってスゴイ……。

試着室を出ると大ちゃんが居ない。

松藤さんが"今、お電話に出られています"と教えてくれた。

しばらくして大ちゃんが不機嫌な表情を覗かせて戻ってきた。

私を見つけると柔らかく笑う。

「馬子にも衣装?」

「ヒドイ!!」

「ウソ、似合ってるよ。
携帯貸して。写真撮ってやるから。」

私はさっきの大ちゃんの表情が気になっていた。
今の電話の相手……もしかして佐々木さんなんじゃないか?
大ちゃんがブライダルフェアに行っていると知れば当然、心穏やかでは居られないだろうから。
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