忠犬ハツ恋
「お前大輔の婚約者に電話して何話すつもりなわけ?」

「当然!
婚約破棄してもらう。
広夢(ヒロム)には父親が必要なのよ。新しい父親は大輔しかいない。ヒロムもすっかり大輔になついちゃってるし。」

「セコい言い方だな。
大輔を必要としているのはヒロム君よりお前の方だろ?
それをそうやってヒロム君をダシにして大輔を口説く。
お前のやり方は全くもって汚い。」

「手に入れたいものを効果的に手に入れる、それのどこが悪いの?」

私が見掛けた詩織さんのふんわりとした雰囲気、詩織さんの柔らかい声からはイメージ出来ない強さだった。
これが母親たる所以なの?

「お前さぁ、前から聞きたかったんだけど
本当に旦那に暴力振るわれてんの?」

そう問われて詩織さんはクスクス笑った。

「あの人には暴力振るうような度胸無いわ。
あれは旦那のつきまといを大輔に相談してた時に、大輔が私の腕にアザを見付けて大輔が勝手に早とちりしたのよ。
ただ転んで出来たアザだったのに。」

「それならそうと訂正しろよ!」
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