忠犬ハツ恋
私が動揺して震えるからパイプ椅子が一瞬ギシリと音を立てた。

一色先生がそれを誤魔化すように派手に自分のパイプ椅子を引き立ち上がる。

「よぉく分かった。
悪かったな、呼び出したりして。」

それを合図に詩織さんも立ち上がる気配がした。

「大輔と一色君ってそんなに仲良くないのね?
大輔は何も語らないって?
まぁこんな事一色君に話せば叱られるに決まってるから言えないんだろうけど。」

詩織さんはそう言って指導室を後にした。

一色先生は深く溜息をつくと私に謝罪する。

「悪い、美咲ちゃん。
こんな事なら何も知らない方が良かったかな?」

一色先生がパテーションの裏にいる私をそっと覗き込んだ。
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