忠犬ハツ恋
私はカタカタと震えながら椅子から立ち上がれずにそこにいた。
ショックで上手く頭が回らない。

ただ一つこれだけは言えた。

「いえ……、非通知の相手がはっきりしてスッキリしました。
非通知は着信拒否にします。」

「…大輔、呼び出そうか?
美咲ちゃんどうしたい?」

一色先生は私の前にかがみこんで小さい子にそうするように私に優しく問いかける。

「……大ちゃんの口から真実が聞きたい。
でも、……今は無理です。」

「そうか。
俺に何かできる事があったら言って。俺は美咲ちゃんの味方だから。」

一色先生は私に名刺をくれた。
一色先生の携帯番号を知るのは初めてだ。

「にしても美咲ちゃんって意外に気丈だね。
この状況下じゃ泣いてるかと思ってた。」

「泣きませんよ。だって何も無かったって詩織さん言ってたじゃないですか。」
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