忠犬ハツ恋
お母さん達の職場のデザイン事務所に着くと、ちょうど大ちゃんのお母さんが何処かへ出掛けるところだった。
幸枝おばさんは私を見つけるなり抱き付いてくる。

「ごめんねぇ美咲ちゃん、ウチのバカ息子のせいで自宅謹慎なんて。
今度会ったら私が殴っとくから!!」

「いや、幸枝おばさん…あのね…。」

大ちゃんはすでに昨日金髪に殴られている。
これ以上誰も大ちゃんを殴って欲しくなかった。
おばさんの言う事は冗談じゃ済まない事が多いから笑えない。

「話したい事は沢山あるんだけど、これからお客様と打ち合わせなの。この件は今度ゆっくり話そうね。」

幸枝おばさんは慌ただしく去って行った。

「ホント、幸枝ちゃんはなかなか時間に余裕を持たないから…。今出て間に合うのかしら?」

お母さんが事務所に入って行くのに私も続く。
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