忠犬ハツ恋
俺はコーヒーを淹れてテーブルに運ぶ。
大我は胸ポケットからタバコを出しているところだった。

「タバコはベランダで吸えよ。」

「はいはい。」

大我は一旦出し掛けたタバコを胸ポケットにしまい直す。

「今回の事で美咲ちゃんがまだ高校生だという事が詩織にバレたな…。」

「白状しろよ大我、
詩織といつ話した?」

「何の事だ?」

「しらばっくれるな。
美咲は俺が詩織をホテルまで送った事を知ってた。詩織の息子の名前まで。
美咲は"詩織の話を偶然聞いた"と言ってる。
詩織がそんな話をする相手、お前しかいないだろ?
どうやったらそんな話をしてるところに美咲が居合わせる?
それは本当に偶然か?」

大我は椅子に座りコーヒーを一口飲んだ。

「体験講座に美咲ちゃんがいるのを見つけた。
美咲ちゃんはただ体験講座に来てたわけじゃない。詩織の事を探りに来てたんだよ。
だから言ったろ?綻ぶ時はどこからでも綻ぶって。女のカンを甘く見るな。」

「お前が2人を引き合わせたのか?」

「引き合わせてはいない。
ただ美咲ちゃんは知りたがってた。
お前の周りをチラつく女の影。
だからその機会をあげたんだ。
美咲ちゃんは不安なんだよ、分からないのか?」

美咲は確かに俺に不安を訴えた。
不安に思う事など何も無いのに。
俺が美咲を裏切るワケないじゃないか。
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