忠犬ハツ恋
この親にしてこの子
謹慎2日目、茜ちゃんから携帯に着信が入った。
私は昨日同様、来るはずのない来客と掛かって来るはずのない電話の為に受付カウンターにいて、ダラダラと近くに山積みの女性週刊誌を読んでいるところだった。
「美咲〜!元気?!」
「ヒマ〜!!
お母さんの事務所で電話番してるんだけど何もないの!ヒマだよ茜ちゃ〜ん。」
「まぁ明日までのんびりすれば?
その間にこっちは上手くやっとくからさ。」
茜ちゃんの言い方が妙に引っ掛かった。
「もしかして、私、噂になってる?」
「皆、ゴシップ好きだからね。
真面目そうな美咲が援交で補導となれば
それは方々が騒ぐよ。」
「援交じゃないよ!それ大ちゃんだもん!!」
「それはちゃんと亜希子先生が説明したんだけどね。"美咲は従兄弟といるところを間違って補導されたんだ"って。
でもそれならどうして謹慎してるんだ?って、それが逆にやましい事を認めてるんじゃないか?って皆が騒いでる。」
皮肉にも私を守る為の謹慎が私の行動のやましさを認める結果を招いていた。
「先生は大ちゃんは婚約者だって言った?」
「いや、そこは先生ワザと伏せてる。
うるさい保護者がいるらしくてさ。
そいつは美咲が高校生のくせに婚約してるって事にも難癖つけて来るらしい。
だからそこはあまり広めないようにしてるんじゃないかな?」
「………そうなんだ………。」
と言う事は檜山君はまだ真実を知らない。
大ちゃんは筧戸大輔だと言う事。
私は大ちゃんと婚約していると言う事。