忠犬ハツ恋
事務所はそんなに広くなく、応接スペースと事務机が4つ向かい合ったスペースと小さな急騰スペースが無理矢理同居している。

事務机の上は何処も書類だらけ、
FAXの受信を知らせるランプが点滅したままで、流しは洗い物が散乱していた。

ここを見るとお母さん達の事務所が天国に見える。

事務員さんいないのかな……?

「さっきのおじさん。サクラさんの…?」

「親父。
俺の遠い親戚でもある。」

檜山君がスタスタと流しに向かうから私もついていって洗い物を加勢した。
檜山君が食器を洗剤で洗い、私が水ですすぐ。
何だか新婚夫婦みたいで妙に恥ずかしかった。

「檜山君、ありがとうね。いろいろと…。」

檜山君はしばらく無言で黙々と食器を洗っていたが、ふと泡だらけの手で私の手を掴んだ。

「…檜山君…?」

「兄貴から白石には育ての親みたいな従兄弟がいるとは聞いた。
亜希子先生はお前はその従兄弟といるところを誤って補導されたと言ってた。
ならどうしてこんな騒ぎになる?」
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