忠犬ハツ恋
その日は茜ちゃん家に泊めてもらった。
試験勉強なんてそっちのけで茜ちゃんに事の経緯を全て話した。

大ちゃんの職場に元カノがいる事。
元カノはバツイチ子持ちで大ちゃんとヨリを戻したがっている事。
元カノは"別れた旦那が待ち伏せているから帰れない"とウソをつき、大ちゃんとホテルに行った事。
子供に大ちゃんの事をパパと呼ばせている事。
深夜に非通知で電話をしてきたのはその元カノだった事。

「大ちゃんが元カノとホテルに行ったのを知って、"私をホテルに連れてって"って大ちゃんにせがんだの。そしたらその時運悪く補導された……。」

「成る程、おかしいとは思ったけどね?
美咲と大ちゃんならわざわざあんなとこ行く必要ないでしょ?
場所ならいくらでもあるんだし。
話聞いて納得。」

茜ちゃん家に泊まる事はお母さんには連絡した。
でも大ちゃんに連絡する勇気はなかった。
今日の事をどう問い正せばいいのか分からない。

「それにしても厄介な元カノだね。
かなりの強敵だよ?どうすんの?美咲。」

「どうするって……。」

私は胸元の婚約指輪を服の上からギュッと握り締めた。
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