忠犬ハツ恋
「ひどいメール。それ送る気?」

背後の人にそう言葉を掛けられ驚いて振り向いた。

「一色先生!」

一色先生があまりに近くにいるから身動きが取れない。

「あの、……少し離れてもらえません?」

「え〜、ここからの眺めが最高なのに。
チラッと見える人妻の胸元。
美咲ちゃんくらいがちょうどいいよね。手にすっぽり収まる感じ。」

「何の話ですか?!何の?!!」

電車の中で平気な顔してそんな事を言うから私は恥ずかしさで下を向いた。

「一色先生何で今こんなとこにいるんですか?
ウチ試験休みですよ。塾は大忙しでしょ?試験勉強。」

一色先生は私にスーツの上着を羽織らせた。

「これでもちゃんと仕事してんの。大学にご挨拶。」

よく見ると確かに一色先生は珍しくスーツにネクタイ姿だった。
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