忠犬ハツ恋
「昨日友達の弟のお迎えに保育園に同行したんです。そしたら…。」

そこまで言っただけで一色先生は分かってしまった。

「あぁ、……見ちゃったんだ。大輔が詩織の息子を迎えに行くところ。
……美咲ちゃんはメアリーだなぁ…。」

「メアリー?誰ですかそれ。」

「壁に耳あり障子にメアリー。
いつもタイミング悪く大輔の見られたくない場面に出くわすよね。」

「そういう人の事をメアリーって言うんですか?一色先生本当に国語の講師?」

一色先生はマグカップをローテーブルに置いて私をしっかり見据えた。

「弁解するつもりはないけど…、
昨日詩織が東野で貧血で倒れた。
最初ヒロム君は俺が迎えに行く予定だったんだよ。大輔は講義中だったからね。
でも関係性のはっきりしない人に子供を預けるわけには行かないって保育園に断られた。」

という事は大ちゃんはヒロム君の父親だと保育園側に認められているという事?
確かに昨日の大ちゃんとヒロム君は本当の親子みたいに自然だった。
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