忠犬ハツ恋
「どうしよう檜山君。」

「まだそうと決まったワケじゃないだろ?
白石が今から動揺してどうすんだよ。」

アイスコーヒーを飲み干して檜山君が笑うから、その笑い声に私は少し落ち着きを取り戻した。

檜山君は自分の飲み干したグラスを流しに置き、私の飲みかけのグラスを私から取り上げると鉛色に光る調理台の上に静かに置く。

この雰囲気……嫌な予感がした。

「あの……この間が…最後のキスだったんだよね?」

「周防やサクラさんの心配もいいけど少しは俺の事も心配しろよ。」

「…檜山君どうかした?」

檜山君は大型冷蔵庫に両手をついて私を冷蔵庫と檜山君の間に閉じ込めた。

「お前の大ちゃんが気になって東野の招待生になった。
それ以上に白石と少し距離を置きたかったんだ。
どっぷりお前にハマってく自分が嫌だった。
すんなりお前が手に入らない事は目に見えてるからな。」

「…檜山君……。」
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