忠犬ハツ恋
「ごめんなさ〜い。
お願い、離して!苦しい!!」

檜山君はようやく私を解放すると腕を組んで仁王立ちした。
私は慌てて茜ちゃんのそばに駆け寄って助けを求める。

抓られた頬がヒリヒリした。

「まぁ、許してやってよ檜山。
ってか美咲がワン切りした事に気づいてるって事はちゃんと起きてんじゃん。」

「たまたまその時眠りが浅かったんだよ!
そのまま二度寝してこの時間だ。
部外者は黙ってろ、周防。」

茜ちゃんはやれやれと両手を顔の横で振ってみせた。

「美咲に絡んでもムダだよ。
美咲には非通知でかけるしかない事情ってもんがあるの。それがどう言う事か分かるでしょ?」

「東野のガリ勉、大ちゃんの事か?」

檜山君がその名を口にするから私は驚きで言葉を無くした。
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