忠犬ハツ恋
「ダメだよ、そんなの…。」

「俺がいいっつってんだよ。
ほら、目ぇ瞑れ。そしたら外見は分かんねぇだろ?声が違うのは諦めろ。」

檜山君が手で私の目を隠した。
耳元で大ちゃんよりも少し荒い声が響く。

「美咲……、俺にどうして欲しい?」

檜山君に"美咲"と呼ばれ心臓が跳ねた。
これが大ちゃんだったらどんなに………。

「…………ギュッて……して…?」

檜山君の力強い腕が私を包む。

「こうか?」

「もっと、……痛いくらいギュッて。」

檜山君が更に力を込める。
私もそっと檜山君の背中に手を回した。

「次は?」

「………キス…。」

確かに目を瞑っていれば大ちゃんのように感じなくもない。

「もっと……沢山………。」

私は檜山君の暖かく柔らかで深いキスに酔いしれていた。
またしても罪悪感は薄れて行った。
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