忠犬ハツ恋
「か、彼は?」

「言ったよ。1回目の検査薬試した後すぐ。
そしたらさ"ちょっと考えさせてくれ"ってそのまま音信不通。
ねぇ、これってどう思う?」

茜ちゃんの口調は普段通りだった。
それが無理しているように思えて切ない。

「茜ちゃんのお父さんとお母さんは……何て…?」

「堕ろせってさ。
まぁ仕方ないけどね。」

茜ちゃんの彼の辰也君はまだ大学1年生だ。
アルバイトはしてるみたいだけどとても家族を養う程の収入ではないと思う。

「でもさ、私、産みたいの。
親は"今じゃなくてもまた彼の子を身籠ればいい"って言うけど、今お腹にいる子は今じゃなきゃ生まれて来れないでしょ?」

茜ちゃんの言う事も分からなくはないけれど、それは簡単な話ではなくて……。

「体調良ければ明日は学校に行くつもり。
でも体育とかは出れないなぁ〜。」

「うん……、無理、しないでね。学校で待ってる。
何かあったら何時でもいいから電話でもメールでも頂戴。」

「ありがと美咲。」

茜ちゃんとの電話はそこで切れた。
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