忠犬ハツ恋
「ありがと……。」

檜山君は珍しく起きていた。
普段も机に突っ伏しているだけで起きてはいるようだが、今は珍しくちゃんと上体を起こしていた。

長い前髪の間から教壇の先生をじっと見つめながら私に話し掛けてくる。

「ボーッとしてる原因は周防のせいか?それとも俺のせいか?」

「えっ?」

檜山君はさっき教室で堂々と私を好きだと告白した事を気にしているようだったが、私の考え事はそっちじゃない。

「ごめん……。」

「謝るな。状況が状況だ。分かってて聞いたんだ。
ただ俺はここで堂々とお前への気持ちを明かした事を後悔してないぞ。
隙あらば俺は容赦なくお前を奪う、そう言っただろ?」

「檜山君……。」

檜山君は机の下から手を伸ばし私の手をそっと、そして力強く掴んで離さない。

「大丈夫だよ。周防は大丈夫。」

茜ちゃんが心配で泣きそうになるのを上を向いて必死に耐えた。
私は返事をする代わりに檜山君の手を強く握り返した。
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