忠犬ハツ恋
「辰也から中絶費用貰ったんだ。
でも流産しちゃっから費用が半分で済んだの。
浮いたお金返さなくっていいって言うからさ。」

「………茜ちゃん…。」

「辰也、母親と一緒に来たと思ったら中絶費用出すから別れてくれって。
何だかこういうとこで男の資質って言うのかな?本性が見えるよね。
良かったよ、あんなヤツと別れて。」

「茜ちゃん………。」

「まだしばらく安静って言われてるから、学校行けるようになったらさカラオケ行こう!」

「茜ちゃ〜ん……。」

私は話を聞きながらとめどなく流れ落ちる涙を拭う事も出来なかった。
茜ちゃんは電話越しに私を笑う。

「何であんたが泣くのよ。」

「だって……。
行く!カラオケでもどこでも。
茜ちゃんの行きたいとこどこでも付き合うからね!!」

「……美咲のその涙もろいとこ、好きよ。
ありがとう、心配かけたよね?」

茜ちゃんは気丈だった。
ただひたすらに茜ちゃんって凄いなぁって思った。

「私も茜ちゃん大好きだよ!
辛かったね?よく頑張ったね?」

そしたら向こう側で嗚咽が聞こえた。
茜ちゃんが泣くところなんて始めて遭遇した。
今まで必死に泣く事すら我慢していたのかも知れない。

それからしばらく2人で電話越しに思う存分泣いた。
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