忠犬ハツ恋
お母さんがカラオケBOXに来たいと言ったから今ここに居るのに、お母さんは何故か歌を歌おうとはしない。

「お母さん、歌わないの?」

さっきから私ばかり歌っていた。

お母さんはウーロン茶を一口飲むと、私からマイクを受け取りマイクを使って私に聞く。

「美咲、あんた大ちゃんと何があった?」

「えっ?………って…?な、何?」

お母さんはマイクのスイッチを切ってテーブルの上に置く。

「大輔から電話があったのよ。
美咲がもし"婚約破棄"とか言い出してもちょっと喧嘩してるだけだから受け流しておいてくれって。」

「婚約破棄?!!私が?」

「随分大ちゃんと会ってないんでしょ?」

「会ってないってまだ一週間だよ?」

「美咲、これだけは言っとく。
私はあんたの母親だからいつでもあんたの味方よ。大輔が何と言おうと美咲が婚約破棄したいならお母さんもお父さんも止めない。」

「お父さんも…大ちゃんとその話してるの?」

「ううん、お母さんだけ。
でもお父さんが婚約破棄に賛成しないはずないでしょ?」

お父さんは私と大ちゃんの婚約にもあれだけ消極的だった。これで私が破棄すると言い出せば盛大に祝ってくれるかも知れない…。
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