忠犬ハツ恋
「大輔が抱きたかったのは美咲なのよ。
美咲、小学生になってすぐくらいのとき"大ちゃんがコワイ"ってお母さんに泣きついて来たの覚えてない?」

………?
そんな事あったっけ?

「大輔は美咲に手を出そうとしたそうよ。
それを美咲に泣いて拒まれたって。
当たり前よ。大輔は高校生でも美咲まだ小学生よ。怖いに決まってるじゃない!」

お母さんは何とも複雑な表情で私の肩を抱き寄せた。

「でもね、美咲の子守を大輔に頼り切ってた私達にもその責任はあるの。
ゴメンね、美咲。」

その時ふと、大ちゃんが私から離れて行った過去の記憶を思い出した。
あれは…確か時期的にそれくらい……。

「だからあの時大ちゃんは私から離れて行ったの?」

「かなり自分を責めてたわね。
"俺は小学生相手に何やってんだ"って。
で、その頃詩織ちゃんと付き合い出した。
詩織ちゃんは多分、美咲の身代わりだったのよ。」

私の……身代わり。
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