忠犬ハツ恋
カラオケを出るとお母さんが「じゃあね」と手を上げる。

「えっ?家まで送ってくれないの?」

「だってお母さん仕事抜けて来たんだもん。早く戻らなきゃ。」

「じゃあカラオケ1時間にしておけばよかったじゃない。」

結局カラオケBOXに居ながらほとんど大ちゃんの過去の話をしていた。
別にわざわざここで話す内容でもなかったのに…。

「だって歌いたかったんだも〜ん。」

お母さんはあっけらかんと言う。
その歌いたかった曲がよりによって"ラブ  イズ  オーバー"………

「ホントお母さんって子供みたいだよね…。」

皮肉ったつもりだったのにお母さんは何故か喜んだ。

「お父さんも"お前はいつまでも若くていいな"って褒めてくれるのよ。」

お父さんもきっとそれは皮肉を込めて言っている。でもお母さんはKYだった……。

お父さん……お気の毒……。
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