忠犬ハツ恋
檜山君はぶかぶかのネイビーのTシャツとハーフパンツのジャージを貸してくれた。

これならゆったりとした気分で休めそうだ。

「ありがとう……。」

「先に寝るなり、TV観るなり好きにしてろよ。
俺、風呂に行って来るから。」

「……うん。」

とてもじゃないがまだ休む気にはなれなかった。
恐る恐る鞄の携帯を手に取る。
大ちゃんから掛かって来ることを予想して電源は切っておいた。
試しに電源を入れると、案の定大ちゃんからの留守電が8件。

寝込む程の頭痛を感じながら今頃私を探し回っているんだろうか?

少しの罪悪感を感じつつ留守電を1つも聞かずに全消去した。

そのままマナーモードにしてまた鞄に放り込む。

ふと正面のTVボードに目を遣ると私の観たかったフランス映画のDVDを見つけた。
予告編で出てくるスイーツがとても可愛くて美味しそうで。
映画館で観たかったのに人気があまり無かったのかタイミングを逃しているウチにあっという間に上映を打ち切られてしまっていた。

勝手に観てもいいかな…?
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