忠犬ハツ恋
檜山君はそのまま私のTシャツを胸元までたくし上げると現れたおへそにキスをした。

「わっっ!!
ちょっと!待ってよ!
お兄さん来るかも知れないんでしょ?」

「鍵はキーチェーンしてる。
入っては来れないけど音は聞こえるはずだから、声出すなよ白石。」

「えっ?ちょっと!!やっっ!檜山君!!」

すると檜山君がピタリと動くのを止めた。

???

「な、何?」

「ケータイ。
鳴ってんぞ。お前だろ?」

そう言われて耳を澄ますと確かにブブブ…とバイブの低い振動音が私の鞄から響いていた。

大ちゃんだ…。
直感的にそう感じた。

私は携帯を無視して檜山君の両頬に両手で触れると自ら檜山君に口づけた。

私の行動に檜山君が目を丸くする。

「………白石…。
いいのか?…電話。」

「……いいの。」

「…そうか、ならいい。」

檜山君は突然私の首の後ろに手を回す。
ネックレスに通しておいた婚約指輪はいとも簡単に取り外され、ローテーブルの上に無造作に置かれた。

「お前は…こんなものに縛られてっからダメなんだよ。」

「えっ?」

檜山君は私を担ぎ上げると寝室へと向かう。
交換されたてのシーツはほのかに柔軟剤の香りがした。
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