忠犬ハツ恋
荒木先生の足音が近づいて来る。

その時私は寝室で檜山君に抱きすくめられていた。

「離して檜山君!
…私……帰らなきゃ。」

「どうやって帰んの?
今、ここを出れば大ちゃんと鉢合わせるぞ。」

「でも!……でも…。」

私は必死に檜山君の胸を押し返す。
が、とても檜山君の力には敵わなかった。

「大ちゃんに教えてやれよ。お前は誰のものか。」

「!!」

私は檜山君に寝室の扉に押さえ付けられた。
檜山君の唇がまたしても私の首筋を這う。

「ぃやッッ!檜山君!
お願い!!……止め…て…。」

大ちゃんに気付かれる!!

でも抵抗しようとしても麻酔でもかけられたかのように何処からともなく力が抜けてゆく。

背後の寝室の扉がノックされ檜山君はようやく動きを止めた。
扉越しに少し苛立った荒木先生の声が響いて来る。

「圭太?お前、人を待たせといて何やってんだよ。」

すると檜山君は私を寝室に残して荒木先生の元へと出て行った。
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