忠犬ハツ恋
ログハウスの中に一歩足を踏み入れるとそこは外観とは全く違った洋館風の内装だった。

部屋毎に違う壁紙や家具。
でもそれらはそれなりに統一感を持っていて、ちぐはぐな感じがしない。
1つ1つが上品でお洒落で高級感を漂わせている。
そして驚くほど掃除が行き届いていた。

こんな場所にある別荘に足繁く立ち寄るほど一色先生は暇じゃないはず。

「どうした?」

部屋を感心して見回す私に一色先生が声を掛けた。

「お部屋、綺麗だなって思って…。」

「あぁ、管理人さんが掃除してくれるんだよ。
ここは滅多に利用しないからね。
家は人が住まなきゃ直ぐに朽ちる。
いつ立ち寄っても問題無く過ごせるように掃除やら換気やら防犯やらお願いしてる。
だからほら。」

そう言って一色先生は冷蔵庫からメロンを出して見せた。

「事前に連絡しとけば色々不自由無いように用意しておいてもらえる。メロンは俺のリクエスト。
この辺メロン農家多いんだ。美味いんだよ。」

私は手近にあった革張りの重厚そうな1人用の椅子に遠慮気味に浅く座り一色先生に聞いた。

「あの………大ちゃんは…?」

てっきり大ちゃんの元に連行されるものと思っていたのにここに大ちゃんの気配は無い。
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