忠犬ハツ恋
「俺にだけ本当の事教えてよ。
早くしないと大輔が駆け付ける。
俺らがここにいる事は大輔は知らないけど、あいつ美咲ちゃんの事になると妙に鼻が利くからね。」

………。
私達がここにいる事は大ちゃんは知らない?

私を車に乗せる時一色先生は確かに"大輔のピンチに現れるお助けマン"だと言ったのに…。
それはどう言う事なんだろう……?

「教えてくれなきゃ俺が襲っちゃおうかな?」

一色先生が目の前でいたずらっぽく笑った。

「美咲ちゃんが大輔を裏切る、この事実が大事なんだよ。そうすれば美咲ちゃんの性格上大輔の所になんて帰れない。
檜山でいいじゃん。あいつ女慣れしてそうだから安心だろ?」

「………一色先生…?」

先生の言う意味が分からなかった。

"大ちゃんを裏切った事実があれば大ちゃんの所になんて帰れない?"

"檜山君なら女慣れしてそうだから安心?"

それは大ちゃんと私の破局を望む人の発言だ。

もしかして…もしかして一色先生の好きな人って……。

前に"近くにいるのに、なかなか手が届かない人"  "別の方向を向いている人"と言っていた。

それがもし……大ちゃんなら…?

「一色先生?
………もしかして一色先生の好きな人って…。」

一色先生は一瞬沈黙するとにっこり笑って答えた。

「俺の好きな人教えたら美咲ちゃん協力してくれるんだったよね?
じゃあ協力して?
大輔と別れて。
ただ別れるじゃダメなんだよ?あいつ美咲ちゃんにぞっこんなんだから。
こっ酷く傷付けて別れるんだ。」

そう言って一色先生は私の制服のリボンに手を掛けた。
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