忠犬ハツ恋
私は慌てて一色先生の手を掴んで止める。

「一色先生!ストップ!!
大ちゃんが好きならこんな事おかしいです!」

「だから詩織を嗾けた時にサッサと別れてれば良かったんだよ。」

一色先生のその発言に我が耳を疑った。

「………詩織さんを…嗾けた……?」

だって詩織さんが東野に来たのは偶然だって言ったのは一色先生だ。

「詩織の住んでるアパートをたまたま見付けて東野の生徒募集のチラシをポスティングした。
それには事務員募集の告知も書いてあった。
そのチラシの写真は教鞭をとる大輔の写真が載ってた。
詩織が東野に来るのを俺は分かってた。」

「……ウソでしょ?
だって一色先生…私を応援するような事言ってたじゃないですか?
大ちゃんは私の事を1番に考えてるから大丈夫だって。」

「美咲ちゃん、本当の悪人ってのはさ悪人面してないもんなの。
俺は誰からも嫌われずに自分の手を汚さずに大輔と美咲ちゃんを別れさせたかった。
まさか高校一年生相手に大輔が婚約するとは思ってなかったからあの時は本当焦ったよ。」

私はあまりのショックに言葉を失っていた。

「さあ美咲ちゃん、大輔と別れると俺に誓って。」

「……私達が別れれば…大ちゃんは一色先生のものになるんですか…?」

大ちゃんは一色先生の想い人を"知らない"と言っていた。
古くからの親友にそんな想いをカミングアウトされても戸惑うだけで成就なんてしないんじゃないか…?
< 408 / 466 >

この作品をシェア

pagetop