忠犬ハツ恋
「いいんだよ、俺のものにならなくたって。
俺はただ大輔の1番近くにいられればいい。」

そう言う一色先生はとても苦しそうだった。

「それには美咲ちゃんの存在が邪魔なんだ。分かる?
大輔の過去に幻滅したろ?
美咲ちゃんは後は檜山を選べばいいんだよ。」

「…一色先生………。」

一色先生はいったいどんな思いで今まで大ちゃんと私を見て来たんだろう…?

大ちゃんの側にいながら想いを伝える事も出来ない。

一色先生は前に私に"俺は美咲ちゃんが羨ましい。ちゃんと両想いだろ?"と言った。
……きっとあれは…紛れもない本心…。

一色先生の片想いは私なんかには想像を絶する苦悩の日々だ……。

私は一色先生に檜山君との昨日の事を伝えるべきか迷っていた。

私の裏切りを知れば私と大ちゃんの破局の可能性を感じて一色先生は救われる?

この場に来て誰の何の感情を1番大事にすべきか分からなくなっていた。
何より自分の気持ちが今何処にあるのかが分からない。
グチャグチャな頭の中で言葉に出来ない思いが涙となって溢れ出す。
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