忠犬ハツ恋
お風呂で丁寧に自分の体を清め
一色先生に見付かった檜山君が付けたキスマークを風呂場の鏡でチェックした。

赤みが引いてきている気もするが虫刺されと誤魔化すには少し不自然な感じもする。

前に檜山君が言っていた。

"白石、よく覚えとけ。
やましい事はな、バレなきゃ無かった事になる。
要はバレなきゃいいんだよ"

…そんな筈無い。
私には自分の裏切りを隠し通す自信が無い。
大ちゃんがこのキスマークを見つけたらどうするんだろう?

キスマークを手で覆い深く溜息を1つ吐くと風呂場から上がった。

いつも風呂上がりにはTシャツと短パン姿でそれを寝巻きにしているが、今日は大ちゃんの手料理に少し気を遣って普段着のワンピースを身につけた。
ドライヤーで髪を乾かすと自然な感じでキスマークが隠れるように髪を横に流す。

リビングからはコンソメのいい香りがしていた。
喉は食べ物を受け入れる気がしなかったが、胃袋はこの香りにつられてグーと音を鳴らす。

脱衣所を出てリビングに向かうとすっかり食事の準備が整っていたが、大ちゃんが見当たらなかった。

「大ちゃん?」
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