忠犬ハツ恋
ようやく檜山君に追い付いた頃には落ち着きかけていた息がまた上がっていた。

「ま、待って……ったら…。」

檜山君はこちらに背を向けたまま立ち止まっている。

「何だよ…。」

「……話が。」

「話なんか聞きたかねぇよ!」

檜山君の剣幕に押されて私は黙ってしまった。

「昨日、あの後、筧戸と会ったんだろ?
さぞかし熱い夜を過ごしたんだろうな?
でなきゃ………キスマーク?笑わせんな!
…俺は……結局お前達を焚き付けただけだったわけだ……。」

檜山君は横のブロック塀をドンと叩いた。

「違う、違うの!」

「何が違うんだよ?!!」

檜山君は私の胸ぐらを掴むと襟元を大きく広げた。数個のキスマークが露わになる。

「これが…何よりの証拠だろ…?」

檜山君は私を解放すると茂みに隠しておいたバイクに跨がり行ってしまった。



「…やっと自分の気持ちに気付いたのに…。」

とても今、檜山君に告白なんて出来なかった。
私の身体には無数の大ちゃんの印。
そんな私の告白なんて信用出来るはずが無い。


………檜山君はそれから学校に姿を現さなくなった。
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