忠犬ハツ恋
檜山君はのそっと頭を起こすと私の前に置かれたアイスティーに手を伸ばし飲み干した。

「あ!それ、私の!!」

「ケチ臭い事言うな。後でコーヒー淹れてやる。」

混み合った電車に乗って喉が乾いていた。
正直今日はコーヒーよりアイスティーの気分だったのに…。

頬を膨らませて外を眺めていると不意に檜山君が尋ねて来た。

「そんなに大ちゃんがいいなら何で東野に入らないんだよ。
大ちゃんが年上かタメかは知らねぇけど同じクラスにはなれないんだとしても近くにはいれるだろ?」

檜山君は大ちゃんを完璧に東野の生徒だと思っている。

大ちゃんは東野の講師。
だから当然私は東野に入りたいと主張した。
少しでも近くで同じ空間に居たかった。

でも……。

私は高校を卒業後、進学する意志が無かった。大ちゃんのお嫁さんになるつもりだから。
当然そうなると学習意欲も落ちる。
そんな状態で東野に入られるのは迷惑だと大ちゃんからハッキリ言われた。

東野に入りたければ大学を目指さなければならない。
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