忠犬ハツ恋
「美咲…あんたコレ…。」

「大ちゃんに……返しておいてもらえない?」

「返しておいて…って本気?
これはただのアクセサリーとは違うのよ?」

「分かってるよ!…ちゃんと分かってる。」

お母さんが指輪を眺めながら心配そうに私を見る。

「詩織ちゃんにも困ったものね…。」

「違うの、詩織さんのせいじゃない。」

「じゃあ何よ、大輔の話もこの事なの?
破局の報告?」

私は俯いて首を横に振った。

「多分大ちゃんは……私との同棲の許可を貰いに来るつもりだと思う。」

私の言葉に今度はお母さんが1つ溜息をついた。

「美咲はそれが分かってて、敢えてお母さんにコレを大輔に返せと言うわけね?
自分でけじめつけない気なの?
これじゃ大輔傷付くと思うよ?」

「分かってる……。
でも…大ちゃんに面と向かったら多分……言えない。」

そしたらお母さんは真っ正面から私を真っ直ぐ見据えてこう言った。

「OK!!
大輔と本音で語り合えないんなら、あんた大輔の婚約者失格よ。」

「えっ?」

「これから長い年月、苦楽を共にしてお互いを支え合ってく伴侶だよ?
こんな大事な話も面と向かって言えない相手と将来寄り添って行けるわけないじゃない。
大輔には私から謝っておくから、美咲は自分をしっかり持ちなさい。」

お母さんは私をそう言う言い方で擁護してくれている、そう思った。

「うん…ゴメン。……ありがとう。」
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