忠犬ハツ恋
「小食だな、枝豆だけか?」

俺が問うと大我は驚きの発言をした。

「今まで美咲ちゃんとピザ食ってたから。
ちょっと胃にもたれてんだ。」

「はぁ?何でお前が美咲といるんだよ!」

「美咲ちゃん、悩んでたぞ〜。
ぼーっとしてて車にはねられかけてたところを俺が助けた。」

「………。」

「分かるだろ?
別れを告げられる人間が辛いのは最もだが、告げる方も結構辛いもんなんだよ。」

「うるさいよ。」

俺はふて腐れて少し残っていたビールを一気飲みした。
大我のビールを持って来た店員にお代わりを告げる。

「俺がお前の心の傷を慰めてやろうか?」

大我がさも面白そうに言うから俺はそれを一蹴した。

「要らぬ世話だ。
それより大我、お前、東野を辞めるってどういう事なんだよ。今日、塾長に聞いて驚いたぞ。
何でそういう事俺に言わない?」

大我はタバコの煙を細く長く吐き出し空を見つめながら答えた。

「だって俺、金持ちだからさ。
別に必死に働かなくてもやってけるんだ。
俺に東野はちょっと忙し過ぎるんだよ。」

大我が金持ちなのは事実だが、この言い方は本音をはぐらかす時の言い方だった。

「そうやって…皆、俺から離れて行くんだな……。」
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