忠犬ハツ恋
大我は俺の手からシルバーリングを取り上げ自分の指にはめようとするがそれは当然入らない。

「美咲の指に合わせて作ったオーダーだぞ。お前に入るわけないだろ?」

大我は指輪をはめる事を諦め、指輪をかざして片目で俺を見た。

「寂しい想いをしてるのは大輔だけじゃない。
檜山はコロンビアに行ったらしい。
今は美咲ちゃんも1人だ。」

「……コロンビア?」

檜山の行動は相変わらず不可解だ。
東野の招待生をあっさり辞めた。
優遇されている招待生を途中で辞める事のペナルティーの大きさをあいつは考えないんだろうか?

「喜ばしい事だ。
一生帰って来なければいい。」

そうすればじき美咲の記憶から檜山は消えるだろう。
檜山は美咲のタイプじゃない。
もともと毛色が違うんだ。吊り合うわけがない。

時間がたてば美咲も冷静さを取り戻し、自分の相手が檜山じゃない事に気付くだろう。
そして行き場を失って俺のところに戻って来た時、俺は美咲を責める事無く受け入れてやるんだ。

美咲の隣にしっくりくるのは俺しかいない。
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