忠犬ハツ恋
「荒木先生、今度の強化講座なんだけど2年の学年チーフやってもらうからそのつもりでね。」
「はい!!喜んで承ります!!」
荒木先生が学年チーフ……
そうなると私の勉強を見てもらう時間なんて無くなるかも知れない…。
そんな事を考えながら私は大ちゃんの前にエスプレッソを置いた。
お辞儀して立ち去ろうとする私の手を大ちゃんが掴んで止める。
「そう言う事だから東野に入れ美咲。
お前大学目指す事にしたんだろ?
美咲が卒業後に親父達の会社を手伝うと言い出したと伯母さんが嬉しそうに言ってた。
それなら理系に進む必要があるのに、お前、今、文系じゃないか。
荒木先生もじきお前に構えなくなる。
独学で受かるわけ無い。
東野で俺が教えてやる。絶対合格させてやるから。」
大ちゃんの言う事は至極最もだった。
"卒業後は大ちゃんのお嫁さん"としか目標の無かった私は今やその目標を見失い何と無く茜ちゃんにつられて文系に進んだ。
お父さん達を手伝いたかったらこの選択は間違っている。
でもそれは茜ちゃんも同じ事で、看護師を目指す事にした茜ちゃんも何故か文系にいた。
茜ちゃんは今、塾で必死に理系の勉強をしている。
簡単では無いだろうが、今から頑張れば独学でも何とかなりそうな気がした。
「…東野には…行けない。」
大ちゃんのいる東野には。
大ちゃんは掴んでいた私の手を強く握り直した。
「……檜山から…連絡は?」
大ちゃんにそう問われて私は俯き首を横に振る。
「もう1年も音信不通なんだぞ。
いい加減諦めたらどうだ?」
荒木先生が私と大ちゃんの狭間で居心地の悪い思いをしているのが分かる。
その時OL風の2人組が来店して来た。
私は「ごめん、大ちゃん」と小さく言うと接客に向かった。
大ちゃんの視線を背中に痛いほど感じていた。
「はい!!喜んで承ります!!」
荒木先生が学年チーフ……
そうなると私の勉強を見てもらう時間なんて無くなるかも知れない…。
そんな事を考えながら私は大ちゃんの前にエスプレッソを置いた。
お辞儀して立ち去ろうとする私の手を大ちゃんが掴んで止める。
「そう言う事だから東野に入れ美咲。
お前大学目指す事にしたんだろ?
美咲が卒業後に親父達の会社を手伝うと言い出したと伯母さんが嬉しそうに言ってた。
それなら理系に進む必要があるのに、お前、今、文系じゃないか。
荒木先生もじきお前に構えなくなる。
独学で受かるわけ無い。
東野で俺が教えてやる。絶対合格させてやるから。」
大ちゃんの言う事は至極最もだった。
"卒業後は大ちゃんのお嫁さん"としか目標の無かった私は今やその目標を見失い何と無く茜ちゃんにつられて文系に進んだ。
お父さん達を手伝いたかったらこの選択は間違っている。
でもそれは茜ちゃんも同じ事で、看護師を目指す事にした茜ちゃんも何故か文系にいた。
茜ちゃんは今、塾で必死に理系の勉強をしている。
簡単では無いだろうが、今から頑張れば独学でも何とかなりそうな気がした。
「…東野には…行けない。」
大ちゃんのいる東野には。
大ちゃんは掴んでいた私の手を強く握り直した。
「……檜山から…連絡は?」
大ちゃんにそう問われて私は俯き首を横に振る。
「もう1年も音信不通なんだぞ。
いい加減諦めたらどうだ?」
荒木先生が私と大ちゃんの狭間で居心地の悪い思いをしているのが分かる。
その時OL風の2人組が来店して来た。
私は「ごめん、大ちゃん」と小さく言うと接客に向かった。
大ちゃんの視線を背中に痛いほど感じていた。