忠犬ハツ恋
次の日、私の前に大学進学の為の協力な助っ人が現れた。

強化講座の学年チーフになって私に時間が割けなくなったのを不憫に思った荒木先生が自分の代わりを託したのは他の誰でも無い一色先生。

「俺が家庭教師するからには大船に乗ったつもりでいて。」

一色先生との勉強はシャロンが暇な時、事もあろうか201号室の檜山君家のリビングで行われた。
荒木先生に勉強を教わるのに201号室に入るのは抵抗無かったが、相手が一色先生になると途端に不法侵入のような後ろめたさが私の中に湧き上がる。

「ごめん檜山君」
私は心の中でそう小さく謝った。

「一色先生は東野を辞めて今何してるんですか?」

「今?トレーダー。株で遊んでる。」

「か…株?」

「いや〜でもあれは体に良く無いね。
ずっとパソコンと睨めっこだから不健康そのものなんだよ。
荒木先生から美咲ちゃんの家庭教師の話が来た時は天の助けだと思った。」

………何とも大袈裟な…。

「…大ちゃんは…知ってるんですか?
一色先生が私の家庭教師する事。」

「いや。
大輔は美咲ちゃんの事、東野に入らなきゃ大学には受からないと思ってるんだろ?
それならそのあいつの予想を裏切ってやろうぜ。
俺こういうミッション大好きなんだよ。」

一色先生は私の家庭教師をする事を何かのゲームみたく楽しんでいた。

「だから不合格なんて有り得ないからね?
いい?美咲ちゃん。」

私は変なプレッシャーを抱え込んでしまった…。
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