忠犬ハツ恋
ある日シャロンを手伝っていると
突然光太郎お兄さんに腕を引かれて厨房へと引きずり込まれた。

「な、何ですか?」

光太郎お兄さんは私に携帯電話を差し出し告げる。

「圭太。
しばらく接客はいいから話しておいで。」

始め光太郎お兄さんの言っている意味が分からず私はしばらく固まっていた。

「ほら、ハチ公ちゃん!早く!」

 光太郎お兄さんに半ば強引に耳に携帯電話を押し付けられ、私はようやくその意味を理解した。
お兄さんの携帯電話を自ら持つとその向こうに居るであろう檜山君の声に耳を済ます。

「もしもし?もしも〜し?兄貴〜??
おい!!無言電話なら切るぞ!!」

その声は随分長いこと待ち望んでいた檜山君の声に間違い無かった。

「ま、待って!!切らないで!」

お兄さんから私に突然話し相手が代わった事に檜山君の声は少し動揺した。

「………白石…か…?」

「…うん………。檜山君、元気?」

「何でお前が兄貴といるんだよ。」

「何で…って…、私、今シャロンを手伝ってるから。」

「は?お前何やってんの?
ウチ、バイト禁止だろ?」

「だからバイトじゃないの。手伝い。」
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