忠犬ハツ恋
檜山君は少し呆れたように言った。

「お前さぁ、そんなに大ちゃんのそばにいたいならシャロンじゃなくて東野に行けよ。」

檜山君は1年以上経った今の今でも私と大ちゃんが続いているものと思っている。
今更ながら檜山君と学校で別れたあの日、檜山君にどう思われようと自分の気持ちを伝えておくべきだったと悔やまれた。

「檜山君、私ね、大ちゃんに婚約指輪返したんだよ。」

「!!!!」

「だから私は今、大ちゃんが目的でココに居るんじゃない。
檜山君の帰りを待ってココに居る。」

「……?……冗談だろ…?」

「ごめんね檜山君、長いこと不安定な思いさせて…。
ずっとそれをどうしても謝りたかった。」

「……白石…お前それでこれからどうする気なんだよ。」

「どうするって…、
言ったでしょ?私は檜山君を待ってココに居るって。」

「待つって……いつ帰れるか分かんねぇんだぞ?!」

檜山君のその答えが何だか嬉しかった。
"お前なんか俺にはもう必要無い"そう言われても仕方ないと思っていたのに、檜山君は"いつ帰れるか分からない"と言う。
それは"可能なら帰る"という意味に取れる。

私は否定されたんじゃ無い、
このまま檜山君を待ってても良いんだ。

好きな人から否定されない事の喜びってこんなに大きなものだなんて。
一色先生の大ちゃんから否定されなかった喜びを少し理解出来たような気がした。
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